2026.10.5 相続
遺留分侵害額請求はいつまで?遺言を知った後の期限と準備

「財産はすべて一人に相続させる」という遺言を知り、自分には何も残らないのかと戸惑うことがあります。遺留分という最低限の取り分に関する制度はありますが、誰でも請求できるわけではなく、期限にも注意が必要です。当事務所が、遺言を知った後に確認したい日付と資料を整理します。ここでは2019年7月1日以降に開始した相続の一般的な仕組みを扱います。
遺留分は遺言の無効を求める制度ではありません
遺留分侵害額請求は、一定の相続人が最低限の取り分を侵害されたとき、遺贈や贈与を受けた人に金銭の支払を求める制度です。遺言の内容に納得できないというだけで、遺言そのものが無効になるわけではありません。遺言が有効でも請求を検討できることがあり、反対に、取り分が少なく感じられても侵害がないこともあります。
請求できる立場かを先に確認する
兄弟姉妹以外の相続人に遺留分が認められます。配偶者、子、相続人となる直系尊属などが対象ですが、誰が相続人かによって結論は変わります。兄弟姉妹やその代襲相続人には遺留分がありません。また、相続放棄をした場合は初めから相続人でなかったものと扱われるため、放棄の有無も確認が必要です。
遺留分全体の割合は、直系尊属だけが相続人の場合は算定の基礎となる財産の3分の1、それ以外は2分の1です。複数の権利者がいる場合の個人の割合は、法定相続分も用いて考えます。ただし、この割合を預金残高へ掛けただけで請求額が出るとは限りません。生前贈与、債務、自分が取得した財産なども計算に影響します。
家を返してもらう請求とは区別します
現行制度では、原則として侵害額に相当する金銭を請求します。遺留分があるからといって、自宅の持分や預金口座の名義が自動的に自分へ移るものではありません。不動産の評価と相手の支払方法は、分けて話し合う論点です。
金額の調査と期限の確認を同時に進める
遺留分侵害額請求には、相続が始まったことと、遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年という期間があります。相続開始から10年という期間にも注意が必要です。死亡した日、遺言を読んだ日、贈与を知った日が同じとは限らないため、日付を一つにまとめずに整理しましょう。
| 日付・出来事 | 残しておきたい資料 |
|---|---|
| 被相続人が亡くなった日 | 戸籍、死亡について連絡を受けた記録 |
| 遺言の内容を知った日 | 遺言の写し、届いた封筒、連絡メール |
| 生前贈与を知った日 | 契約書や送金資料、それを受け取った経緯 |
| 請求の意思を伝えた日 | 通知書の控え、到達を確認できる記録 |
話し合い中でも、権利行使の方法を確認する
「もう少し財産を調べてから」「親族が回答してくれるまで」と待つうちに、期間の問題が生じることがあります。金額の資料が全部そろっていなくても、請求する意思をどの相手にどう伝えるかを先に検討する場面があります。単なる不満の表明や、遺産を調べてほしいという依頼が、遺留分請求の意思表示になるとは限りません。
通知は、内容と相手への到達を後から確認できる方法が重要です。内容証明郵便と配達証明を利用する方法がありますが、内容証明だけで到達まで証明されるわけではありません。相手が複数の場合や住所が分からない場合もありますので、期限が近いときは自分だけで文面や宛先を判断せず相談してください。
調停の申立てだけに頼らない
家庭裁判所へ遺留分侵害額の請求調停を申し立てただけでは、相手方に権利行使の意思を表示したことにはなりません。調停とは別に意思表示を行う必要があります。申立書を準備していることや、相談予約が入っていることだけで期限への対応が完了するわけではないため、通知と申立ての役割を区別します。
すでに1年近く経過している場合も、日付だけであきらめる必要はありません。いつ何を知ったか、過去の通知がどのような内容だったかを確認します。ただし、起算点の判断には争いが生じることがあるので、余裕があると自己判断して待つことも避けましょう。
請求額の整理から解決方法を選ぶ
期限への対応と並行して、財産・債務・贈与の資料を集めます。生前贈与はすべて無期限に計算へ入るわけではなく、相手が相続人か、贈与の時期や内容は何かなどで取扱いが異なります。家族の記憶だけで金額を決めず、分かっている事実と未確認の情報を分けておくことが大切です。
相談に持参する資料は、分かる範囲で構いません
- 遺言書の写しと、親族関係を説明できるメモ
- 預貯金・不動産・株式・借入れについて分かる資料
- 自分や他の相続人が受け取った贈与の記録
- 相手とのやり取り、合意書や通知書の控え
不動産の固定資産税評価額が、そのまま遺留分計算で用いる価格になるとは限りません。財産評価の時点や方法をそろえ、争いが大きい場合は査定等の必要性も検討します。資料の取り寄せや専門家への評価依頼には費用がかかることがあるため、見込まれる請求額と比較しながら進めます。
話し合いで解決できなければ、家庭裁判所の調停を利用する方法があります。調停が成立しない場合、金銭の請求について別途訴訟が必要となることがあり、遺産分割のように当然に審判で金額が決まるものではありません。相手が一括で支払えないという場合も、金額、期限、分割の条件を曖昧にしたまま合意しないことが大切です。
合意前に清算の範囲を確かめる
当事務所では、請求できる立場か、期限への対応が必要か、調査と交渉にどの程度の費用がかかるかを整理します。親族との関係をできるだけ保ちたいという希望もお聞かせください。法的に主張できる内容と、ご本人が望む解決をすり合わせて進めます。
相手から合意書が届いている場合は、請求額だけでなく「これ以上何も請求しない」という条項の範囲を確認します。まだ判明していない財産まで含めて清算する内容か、支払が遅れた場合にどうするかは重要な点です。親族間で円満に終わらせたい場合ほど、口約束にせず、お互いが理解した条件を残すことが役立ちます。
- 相談用の財産一覧では、確認済みの残高と伝聞による金額を別の欄に書いてください。資料がない項目をゼロと扱わず、未確認と記しておけば、追加調査が必要な範囲も明確になります。
相談前の整理
遺留分では、相続人としての立場、知った日、通知の内容を先に確認します。請求額の調査だけに時間をかけず、期限への対応を並行して進めましょう。
よくある質問
兄弟姉妹にも遺留分はありますか?
ありません。兄弟姉妹の代襲相続人も同様です。ただし遺言の有効性など、遺留分とは別の問題がある場合は相談できます。
遺言を知ってから必ず1年以内ですか?
相続開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時が問題になります。単に遺言の存在を知った日だけで判断せず、その内容をいつ把握したかも確認します。相続開始から10年にも注意が必要です。
財産総額が分からないと請求できませんか?
資料がそろうまで待つことで期限を過ぎないようにする必要があります。金額調査と、権利を行使する意思表示の対応を分けて弁護士に相談してください。
調停を申し立てれば通知は不要ですか?
申立てだけでは相手への権利行使の意思表示にはなりません。通知の内容、宛先、到達の記録を別に確認しましょう。
2019年6月に亡くなった家族の相続にも同じ制度ですか?
この記事の金銭請求の制度は2019年7月1日以降に開始した相続を対象としています。それ以前は改正前の制度が関係するため、死亡日とこれまでの手続を確認して個別に検討します。
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