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正木ブログ

講釈師見てきたような嘘をつき

COVID-19に由来する諸々の自粛要請で春らしい雰囲気があまりない今日この頃ですが,今年の2月から,東京の各地の寄席で松之丞改め六代目神田伯山真打昇進襲名披露興行が開催されておりました。

近時の寄席がどれくらい人気なのか、正直なところよく分かっておりませんが(2月の節分に末廣亭に行ったときには無理せずとも手拭いをいただけるレベルの混雑度でした)、この六代目神田伯山さんは「今もっともチケットが取れない講談師」などと言われるだけあり、襲名披露興行は連日連夜満員札止めになる大盛況ぶり。基本的に混雑している場所に行くのは好きではないので、行くかどうか迷いましたが、せっかくの機会ということで、早朝から並んで行くことにしました。

末廣亭まで徒歩圏内に住んでおりますので、丸ノ内線の始発が走る前に、と思って鋭意乗り込んだところ既に先客が多数おられ、皆さんの気合いが伝わってくるとともに、私のようなにわかがいていいのか不安にもなりました。が、遠慮せずに並ばせていただき、いい席を確保させていただきました。

この日は神田伯山さんを含め4名の講談師が登場するという日で、4者4様の講談を聞かせていただきました。どれもこれも、まさに話芸という素晴らしさでありました。

 

さて、昔から「講釈師見てきたような嘘をつき」などと言われます。講談協会のサイトにもしっかり載っているような有名な格言です(伯山さんは講談協会所属では無いですが、この日登壇した貞山さんはこちらなので問題ないでしょう)。様々な話を、まさに見てきたように真に迫った調子で語ることから言われている格言です。

この「真に迫った調子」は法律の世界では「迫真性」と言われ、裁判所における証人尋問では、一般に迫真性のある供述は信用性が高いとされています。過去の裁判例を「迫真性」という単語で検索すると大量にヒットし、迫真性の有無で供述の信用性が図られているのが分かります。

とすると、もし講談師が事件の目撃者であった場合、「迫真性の高い供述だから信用できる」とされるのか、あるいはもしかしたら「講談師なので迫真性が高いのは当然である。このことは信用性とは関係が無い」とされるのか、どちらになるのでしょうか。後者を正面から言うと職業差別と言われかねない気もします。なお、判例を検索すると、「講釈師のように」という表現で弁護士が敵対証人の信用性について争っている事例は見つかりました。

 

神田伯山真打ち昇進襲名披露興行もCOVID-19の影響で後半はすべて公演中止となってしまいました。

なんとかこの問題が無事終息し、また寄席にも(裁判所にも)活気が戻ることを祈ってやみません。

 

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