2020.3.27 正木ブログ
芸能事務所の退職トラブル:報道後
昨年(2019年)8月、公正取引委員会が芸能分野の契約や取引について独占禁止法で問題となり得る行為の具体例をまとめた、という新聞報道がありました(参照:日本経済新聞)。
この具体例(公正取引委員会のウェブサイトの奥深くに眠っていて、検索してもなかなか見つからないのです!!)を見ると、「芸能⼈の移籍・独立に関するもの/芸能人の待遇に関するもの/競争政策上望ましくないもの」について「実際に独占禁⽌法違反となるかどうかは,具体的態様に照らして個別に判断されることとなる」との留保をつけつつ、いくつか具体例を挙げています。
弊所に相談のある芸能事務所の退職トラブルは、「いつ連絡をすれば良いのか」という問題と「辞めた後に活動できるのか」という問題が非常に多くみられます。今回公正取引委員会は問題行為の具体例として、後者(辞めたあとの活動妨害)を挙げています。
前者(退所の可否や通知日の問題)は、芸能プロダクションと芸能人とのマネジメント契約(契約書の表題は様々です)がいわゆる雇用契約に近いものなのかどうかという点が問題になります。細かい話は御来所いただいた方から個別の説明を伺ってご説明申し上げることにはなりますが、事務所に命じられた仕事を断る自由が果たしてどの程度あるのか、というあたりは注意しておくべきポイントになります。
このような報道や公取発表資料が出てから、私の肌感覚としてはこの手の相談は少し減ったかな、という印象を受けております。相談が減ったということは、円満に退職されている方が増えているか、芸能プロダクションによる芸能人への不当な取り扱いが減っているのであろうと願うところです。
とはいえ、まだまだこの相談は散見されるところで、特に新学期が始まって新たに芸能プロダクションに所属しようという方もおられるでしょうから、契約の際にはプロダクション側も芸能人側も(未成年の場合は親権者の方々も)気をつけていただきたいと思うばかりです。