事前予約で日曜・夜間もご対応可能です

相談予約
初回無料

0120-401-604

受付時間月曜〜土曜 8:00〜20:00休日日曜・祝日

法律相談WEB予約

東京都新宿区西新宿1-23-1 TK新都心ビル9F

Blog

正木ブログ

改正民事執行法による教示内容の変更(差押の範囲の変更)

2020年4月1日は民法の債権法大改正で話題になりましたが,同時に民事執行法も改正されました。

今回の民事執行法改正の内容は多岐にわたり,一口で説明するのは不可能(というよりも一口で説明すると混乱しか招かない)のでありますが,改正の一つの目玉が,差押禁止債権に関する取立権の発生時期の見直しです。

 

「差押禁止債権に関する取立権の発生時期の見直し」というのはこれ自体が日本語として破綻しているようにも見えてしまうのですが,とりあえず簡単に説明します。

裁判で判決を取ったり,公正証書を作ったりしたにもかかわらず,支払いがないとき,債権を差し押えることができます。「債権」というのは銀行口座(預金債権)であったり,給料(賃金債権)を指します。

友人に100万円を貸したけれど,返済されないので裁判で「100万円を支払え」という判決を取った。というとき,その友人が勤めている会社が分かるのであれば,その会社の給料債権を差し押えることができます。

このとき,給料債権は1/4しか差し押えることができません(3/4が差押禁止債権とされています)。月収20万円であれば,5万円のみ差押可能と言うことになります。他方で,銀行口座はこのような制限が無いため,銀行預金が30万円ある場合,満額差し押えることが可能です。(※差し押さえることと取り立てることは違うのですが,細かい話は無視します)

債権者からすると,1/4でも少ないように思えてしまうのですが,他方で債務者によっては1/4であっても収入が減るわけですから,生活に多大な影響が出ます。

そこで,改正前の民事執行法では,1週間,差押禁止部分を拡張するように申し立てるチャンスが与えられていました。裁判所に「給料の差押は止めてくれ」「銀行預金の差押を止めてくれ」という申立をすることになります。(※1週間後に取り立てが可能になっている,という立て付けですが,ここでも細かい話は無視します)

改正後の民事執行法では,給料債権に限り,この「1週間以内」が「4週間以内」に改められました(但し,養育費等は1週間のままです)。

 

実は,この差押禁止債権の範囲変更の申立は,あまり知られていませんでした。弁護士にも知らない人が多くいました。なぜかというと,そもそもこの「1週間」という期間制限が厳しいため,実際にこの制度が使われることが稀だったためです。

かくいう私も,(改正前の)申立は1回しかおこなったことがありませんでした(ちなみに,差押の範囲が1/4から1/5に減縮されました)。

そこで,新民事執行法では,この制度が存在することを教示することとなりました(新民事執行法145条4項)。「教示」というと非常に偉そうな表現ですが,債権差押命令が届くときに,この制度があることの説明を入れる,という意味です。

 

このたび,裁判所から差押命令が届いた,という債務者からの相談がありました。

この方は銀行口座を差し押えられた方で,差押自体は甘んじて受け入れる,ということでしたので,範囲変更の申立はしていません。

ただ,裁判所から届いた命令に同封されていた書類には,しっかりとこの範囲変更の申立の説明があり,新法が施行されていることを実感いたしました。

債権差押命令が届くと,びっくりしたり何をしていいのか不安になったりして,弁護士事務所に相談に行く前に躊躇する方も多くおられるようです。ですが,時間がたてば立つほど範囲変更の時間制限が迫ってきますし,それ以外にも取れる手段が減っていきますので,できる限り早く,ご相談いただければと思います。

予約・問い合わせフォーム