2022.6.29 法律相談
弁護士に依頼するタイミング
相談に見える方に、時々、「もう、弁護士の先生に頼んだ方がいいんでしょうか?まだ、早いいでしょうか?」と聞かれることがあります。
まず、一般論として、もう、訴訟が提起されているようなときや、逆に、もうあなたが訴訟を提起すると決めていらっしゃるときは、弁護士を頼まれた方がいいです。もちろん訴訟はご自身でもできます。
やっている人もいます。しかし、我々職業的訴訟屋と、そうでない人とでは、やはり大きな違いがあります。ケーキは、「簡単手作りキット」を使えば、しろうとでも、お子さんでも作れます。
しかし、それと、デパートで、あるいはホテルで、売られているケーキは別物です。ただ、ホテルやデパートで売られているケーキを買うには、金がかかります。それと同じです。
では調停ではどうでしょう。調停も弁護士を頼まずにご本人でできます。訴訟よりも調停の方が、ご自身でされる方、多いです。
それは、調停という手続きは、それほど複雑ではなく、かつ、がつがつ法律論を詰めて争う、というよりは、ご本人のお気持ちの整理や納得を重視する手続きだからです。
なので訴訟ほど、弁護士マスト、ではありません。ただ、相手が弁護士を立ててきているときは別です。なぜなら、調停には調停委員という、法律に詳しくない人々が介入しています。
この人たちは法的知識が乏しいので、調停室で、片方の代理人弁護士から、「この点、判例でこうなってますから」とか、「裁判になったらこうなりますからね」などと言われると、「あ、そうかな??」などと考えがちで、そうなると彼らは、あなたのほうにも「裁判になるとこうなるららしいですから、この辺で妥協されたらいかがですか」などと言ってきます。
ところがこれはあくまでも相手代理人の意見でしかないんです。本当にそうなのかどうかは、あなたの味方である弁護士の意見を聞くべきでしょう。
余談ですが、調停委員の中には、かなり明白に一方当事者の肩を持ち、反対当事者に、高圧的に譲歩を迫ってくるひとがいます。そういうのに当たると、ご本人では抵抗が難しくなります。
調停委員によっては、相手に代理人弁護士がついていない場合でも、弁護士を立てた方がいい時もあります。そして、まだ調停にも訴訟にもなっていない段階ではどうか、というと、この場合でも相手が弁護士を立ててきたら、ご自身も立てられることをお勧めします。
次に、相手が「弁護士を立てる」「弁護士を立てて請求してやる」と言っている、という段階があります。この段階ではまだ、焦って弁護士を探されることはありません。
「俺はたくさん弁護士を知ってるんだ」「俺はこのあたりで一番強い弁護士を知っている」「ウチの弁護士がこう言っていたから」などという人に限って、実は誰も知らなかったり、最後まで弁護士を頼まなかったりするものです。
そして、弁護士ではない普通の人とのもめごとであれば、まあ、弁護士を立てなくてもいい時も多いでしょう。もめごとが面倒くさい。仕事が忙しいから対応できない。自分で相手と話すのが精神的につらいので、誰かに任せてしまいたい。というのであれば、お頼みになった方がいいでしょうし、あるいは相手が威圧的であるとか暴力をふるう可能性があるというなら、やはりお頼みになった方がいいでしょう。
一方、紛争が離婚であるときは、少し話が違ってきます。夫婦で離婚話が出ている、離婚話が進んでいる、あるいはこれから離婚話を切り出すつもりだ、というときはいずれの場合でも、まず、弁護士に相談されたほうがいい。
なぜなら、金の貸し借りや、交通事故などとちがって、離婚というのは、日常生活そのものをガラッと変えてしまいます。そのため、論点が非常に多い。どこに住むか、誰が誰と住むか、その費用はどうなるか、今住んでいる家をどうするか、いままでの資産や借金を同生産するのか。これらを一つ一つ解決しなければなりません。
ひとつひとつを、どういう順序で、どう有利にもっていくか、には、戦略が必要です。また、離婚は、日常生活全般にしっかり絡みついてくる問題なので、皆さん精神的に疲弊さます。
交通事故や借金であれば、悩んでいても、「今は考えないでえおこう」「そんなことより子供の世話をしなきゃ」などと考えて、事件から離れることが、比較的容易です。
離婚だとそうはいきません。まさに、毎日の基盤に関することだし、感情も入ります。ご自身で感情の赴くままにやられるよりは、客観的な第三者の視線があったほうが、絶対に良い。ですから、早めに相談されてください。
最後に。弁護士に相談される時は、恥ずかしい、みっともない、ということは全部捨てて、全てを正直に話されてくださいね。あとから嘘だった、と判ると、弁護士の側も色々大変なんです。なので、このひとになら、全部、包み隠さず話せる。という弁護士をお選びになることをお勧めします。