2023.3.10 借金問題
失敗しかかった自己破産を立て直す
最近、自己破産のご相談が急に増えてきました。
そのなかでも、特に目立つのが、「一度、弁護士に依頼して自己破産の手続きを進めているんだけれども、弁護士が辞任してしまって…」という方です。
弁護士が、一度受けた事件を、自ら辞任する、ということは、めったにあることではありません。途中で辞めてしまうというのは、まあ、無責任と言えば、無責任ですからね。私も、もう長年この仕事をしてきましたが、私の方から「辞任します」「辞任させてください」といった事件は、たぶん、一桁にも満たない数だと思います。
私が辞任を決断した事件の中で一番多かったのは、「依頼者と連絡が取れない」というケースだったと思います。電話しても出ていただけない、メールにも返信がない、郵便を送っても、お返事がない、となると、事件を進められません。で、弁護士は事件を放置することはできないので、こうなると、もう辞めざるをえません。
ただ、「自己破産の途中で、弁護士がやめちゃって…」と言ってうちの事務所にいらっしゃる方の多くは、連絡途絶が理由で、弁護士に辞任されてしまったのではないようです。
皆さん、「偏波弁済(親族など、一部の債権者にだけ返済してしまうこと)をしてしまって…」「先生から、やったらだめだと言われていたギャンブルに、手を出してしまって…」「つい、カードを使ってしまって…」、それで、弁護士に、辞任されてしまった、などと仰います。
確かに、偏波弁済も、ギャンブルも、破産手続き中のカード利用や新たな借り入れも、いわゆる免責不許可事由に該当しえます。これがあると、免責が認められない、つまり、自己破産としては失敗してしまうから、だからもう辞任します、という弁護士側の話は、まあ、理屈は通っています。
ただし、です。免責不許可事由があるからと言って、必ず、免責が不許可になるわけではない。頑張れば、それなりに免責は取れます。
だから、いけないことをしたけれども、それだけで弁護士が辞任するほどのことか?というと、意外とそうでもないのです。
それなのに、なぜ、その弁護士は辞めてしまったのか?
思いつく理由のナンバー1は、ずばり、「着手金をきちんと入金してもらっていない」です。破産のお客さんの多くは、着手金を分割で支払っています。その入金が滞ると、弁護士としては、率直に言うと、テンションだた下がりです。弁護士の方からしますと、毎回毎回、「入金してください」「まだですか?」と、督促するのも、相当の手間なのです。
本来やるべき弁護士業務をやりたいんで。
まあ、そうなって、そもそもお支払いいただけなくてテンションが下がっているところに、「すみません、パチンコに使っちゃいました」とかお客さんに言われると、まあ、もう辞任したくなる、という気持ちも分かります。
判りますが、私は、めったに辞任しません。
考えてもみてください。破産しちゃうほど、ギャンブルが好きだったり、買い物が好きな人ですよ。弁護士に、ギャンブルや浪費をやめるように言われて、一発でやめられるくらいなら、そこまでいってません。とっくに、ギャンブルも浪費もやめているでしょうよ。なので、私に言わせると、「やめてくださいね」「はい、やめます」とお客さんが約束してくれても、まあ、破っちゃうかもしれないな、くらいの余裕をもっておかないと、自己破産手続きなんか、できません。
それと、まあ、入金がないのは困りますが、要はそういった、金銭管理がきちんとできるひとなら、最初っから自己破産してません。金銭管理ができないから、自己破産になってるわけですよ。なのでそこも、ある程度腹をくくらないといけません。そういう人をお客さんにするんですからね。
もちろん、お客さんに約束を破られたら、私は、がっかりしますし、きつく言ったりはします。けど、それだけで放り出すわけにはいかん、というのが、私の、というかうちの事務所の考え方です。
現に、前の弁護士に辞任されたお客さんで、うちの事務所でお受けして、きちんと破産手続きを終え、免責ももらって、立派にやり直している方もたくさんいます。
ですから、まあ、もし自己破産手続きの最中に、弁護士に辞任されちゃっても、絶望するには及びません。なんとかなります。ただし、何で辞任されちゃったのか、その原因については反省して、そういうことが今後ないように、なさってください。