2022.7.30 離婚問題
離婚と子供の私学費、その他塾代など
離婚と、こどもの私学費、その他塾代など。離婚自体は賛成なのだけれども、子どもの教育環境や教育レベルを変えたくない。という親御さんはたくさんいます。特に、子どもを引き取って育てる側になることが多いお母さんにとっては、お子さんの塾代、お稽古ごとの費用などは、切実な問題です。
よく知られているように、離婚後の養育費というのは、基本「コミコミ」です。つまり、裁判で言う「養育費」というのは、子どもの受験費用や、受験に伴う塾代、あるいはバレエやピアノなど習い事、部活の遠征費用などが基本的にはすべて含まれている、という理解になります。
もっとも、私学の費用は違ってくることがあります。離婚前に両親が、子どもを私学に通わせることに合意していた場合などには、私学費用は、離婚後も両親の「収入割合で按分する」という結論になることがある。たとえば、お父さん年収600万、お母さん200万であれば、離婚後お父さんとお母さんでのお子さんの私学費用の負担割合は、3対1になるという結論はありえます。
これは、たとえ離婚前にお父さんが全額私学費用を負担していたとしてもです。「離婚前はお父さんが全額私学費用を払っていた。だがら、離婚後もお父さんが全部私学費用を払うべき。」という主張は、裁判で判決になると、なかなか通りません。
習い事費用も同じで、離婚前にお父さんが全額払っていたからと言って、離婚後もそれを続けるべき、とはなりにくい。これは、多くの場合、離婚後に子どもを育てることになるお母さんにとっては困ったことです。「お父さんとお母さん、離婚したからピアノのお稽古は今日で終わりね」とはなかなか子どもに言えない。言いたくない。当然ですよね。
では、この結論を避けるためにはどうしたらいいかというと、離婚する際に裁判で判決まで行かずに、どこかで妥協して和解することです。和解するチャンスはいろいろあります。調停で、お互い譲り合って和解合意するのが一般的ですが、たとえ裁判になっても、和解するチャンスは十分すぎるくらいあります。なぜ和解のほうがいいかというと、柔軟性をもった決定ができるからです。
たとえば、部活遠征費用とか、留学費用したら費用をどうするなどは、判決では完全に見過ごされます。基本、監護親(この話のケースでは、お母さんですね)は、そういうのは養育費の範囲内で何とかして下さい、となるのが判決です。
でも、和解であるなら「子どもが留学した場合にはこうする、子どもの部活遠征費用についてはこうする」などと、ご本人たちがある程度自由に決められます。だから、お子さんの習い事、私学費用や留学費用、部活などについてお父さんに負担を求め、お父さんが判った、と言ってくれたら、そのように決めることができます。ただ、離婚後にお父さんが再婚して、新しい奥さんと子どもができたとします。この場合は、いくら和解で養育費は〇円、塾代、お稽古費用はお父さん負担、などと決めていても、それが変更になる可能性は極めて高いです。そして、これは防ぐことはできません。
そんなのおかしい、離婚したって、父親の子どもであることには変わりない、子どもには離婚前と同じような学習環境を整えてほしい。と多くのお母さんは仰います。たしかに離婚しようが、しまいが、お子さんは二人の子どもです。そのことには変わりありません。
しかし離婚した以上相手に再婚する権利はあるので、再婚相手との間に子どもができたら、そのお子さんを扶養する義務を負うのは当然です。率直に言うと、「離婚後も子どもに離婚前と同じ教育環境、同じ教育レベルを提供することを相手に約束させる。保証させる。」ということは、法律的には、どう頑張ってもできません。
たとえ約束したとしても、相手が再婚してしまえば約束は破棄され得るし、再婚しないという約束に効力はありません。どう頑張っても、「離婚後も、絶対に今の水準を維持する」という確約は手に入らない。それが離婚するということなのです。
離婚して、親が自由を手に入れる一方で、子どもは必ずどこかで損をします。離婚によってお子さんがダメージ(経済的ダメージ、教育的ダメージだけではなく、精神的ダメージを含めて)を受けることは最大限に防ぐべきです。そのために弁護士は精一杯の工夫を凝らします。いろいろな条項を考えます。
けれども、経済的ダメージを、ゼロにする、ということは無理です。そんなお約束ができる弁護士はいないはずです。そのことは覚悟していただきたいとお伝えすると、がっかりされる親御さんも多いものです。
離婚はしたい、離婚後のお子さんの教育費用が心配。なぜあの人は払わないというのか。なんで保証してくれないのか。離婚に至ったのはあの人のせいなのに。子どもが可愛くないのか、あなたの子どもでしょう。とお怒りになる。ですが、離婚する以上、経済的ダメージゼロにはできません。
大事なことは、そのイライラにとらわれて、子どもにたいしてお父さんの悪口を言ったり、イライラをぶつけたりしてしないことです。正直、これが最悪です。親の悪口を言われることは誰にとってもつらいことで、それはお子さんにとっても同じなんです。
なので、それだけはやめてあげてください。お子さんのために。離婚のとき、お金はとても重要です。間違いない。でも、それだけにとらわれないでください。お金よりも、大切なものもありますから。