2023.10.26 相続
円滑な遺産分割のための留意点
遺産分割(相続)は、いったん揉めはじめると、長引きます。1年、2年ともめるケースは、ざらにあります。
その理由はいくつかあります。
まず、相続、ということ自体、一般の皆さんがそんなに多く経験することではありません。
父の死、母の死、兄、姉の死、、、、と、多い方でも4回~5回くらいでしょうか。つまり、ほとんどの一般人にとって、「相続手続き」は、基本的には不慣れな手続きです。
そして、それが発生したときには、たいていの人は平常心ではいられません。
つまり、肉親の死による動揺や悲しみと同時に、まったくなれない手続をしなくてはならない。これは疲れます。
疲労がたまるのと同時に、多くの場合同じく肉親である相続人同士で争いが起こり、憎しみや怒りをぶつけあうわけですから、これは長期化しないですぐ終わる方が珍しいのです。
さらに、皆さん、めちゃめちゃ昔のことまで掘り出してきて「私が中学生だった時は…」(いったい何十年前の話ですか、という話ですが)、などと言い出すので、本当に揉めます。皆さん、ものすごい時間を費やします。
では、どうしたら、相続を円滑に終わらせることができるでしょうか。
「遺言を書いておく」「終活する」、そうすれば揉めない、という方もいます。でも、逆に遺言があるからこそ、揉める相続も山ほどあります。
そんな相続ですが、円滑に終わらせる可能性を高める秘訣は、あることはあります。それは、ずばり、「諦める」ことです。
何を諦めるのかというと、
① 「私が一番親の面倒を見たのに」という思い、
② 「私が長男・長女なのに」という思い、
③ 「私が、家業を継いだのに」という思い、
④ 「本当は、死んだ親は、○○は私に遺したいと思っていたはずだ」という思い、
などなどの「思い」です。
つまり「私は、ほかの相続人とは違う」という思い、ものすごくはっきり言ってしまうと、「法定相続分以上にもらいたい」という思いを捨てることです。相続人全員が、「私の取り分は、法定相続分でいい」と思っていれば、相続は、多くの場合、揉めません(まあ、それでも絶対に揉めないとは限りませんが。。。。)。
ひとりでも、「私は、ほかの相続人と違って、○○してきたのだから、法定相続分より多くをもらっていいはずだ」という人がいると、当たり前ですが揉めます。「ほかの兄弟など相続人も、自分が親のために頑張ってきたことは判っているはずだ」と仰る方もたくさんいますが、現実にはそうはなりません。「おにいちゃんは学費を/結婚準備金を/マイホーム費用を/出してもらってたんだから、親の面倒見てあたりまでしょう」などという反論が返ってきて、逆に怒り心頭になる、という場合も多々あります。
「うちは、兄弟仲がとてもいいから、大丈夫。オレが親の介護を頑張ったこと、弟も妹も判ってくれる。だから、寄与分を認めてくれるはずだ。」という方もいます。これもまた、現実にはなかなかそうはなりません。兄弟は、「お兄ちゃん、頑張ってたもんなあ…」と思っていても、その奥さんあるいは旦那さんが、「何言ってるの、兄弟は等分でしょう!うちだって苦しいんだから、きっちり等分にしてもらいなさい!」などと言い出し、ま、そうか。。。。となって、結局揉めるケースはたくさん、あります。
人間はカネを目の前にすると変わる、と言われることがありますが、私は、結局のところ、カネを目の前にすると変わるのではなく「本性が出る」のだろうと思います。とかくカネが絡むことですから「うちは大丈夫」「私たちは大丈夫」と思わずに、「金の絡むことだ、揉めるかもしれない」と、こころしておくことが大事です。
だからこそ、というわけではありませんが、親御さんが亡くなった後、「こんなに頑張ったのに一円ももらえないのか!」と思うくらいなら、最初から、ほかの兄弟よりも介護をしないほうがいいと、私は思います。
「ほかの兄弟はやらないが、それでも自分は親の介護をやる。そのために、一円の得もなくても、やる」という気持ちでおやりになり、実際に親が亡くなっても「法定相続分通りでいい。自分はやりたくてやっただけだ。金のためではない。」という肚がくくれていれば、相続は、揉めません。
とはいうものの、なかなか、人間、そこまで聖人君子にはなれないものです。だからこそ、相続は揉めます。そして長引きます。
最後に。もう一つだけ、相続でもめない方法があります。それは、何も遺さないことです。プラスの財産もマイナスの財産も、もちろん婚外子も、遺さなければ、もめません。
まあ、人間、計算通りに死ねるわけではないので、これも、難しい話ですけれども。。。