2020.7.18 企業法務
感染症で会社を休んでも労災は適用される?知っておきたい基礎知識
病気にならないよう日頃から健康に気を配っていても、未曾有の感染症大流行などによって病気を発症してしまう場合があります。
もしこのような感染症にかかってしまった場合は会社を休まなければなりませんが、感染症による病気は労災保険が適用されるのでしょうか?
今回のコラムでは働く人であればみんな知っておきたい感染症による労災が認定されるか、またどのような病気が労災として認められるのかを解説いたします。
感染症は労災で認められる疾病?
結論からお伝えすると、多くの場合は感染症にかかったとしても労災保険が認められにくいでしょう。労災保険の趣旨は通勤途中であったり、仕事中に起こった偶発的な出来事によって発症したケガや病気に対して労災保険が認められますが、感染症は必ずしも仕事中に発症したと断言できないためです。
たとえば職場内で感染症が流行っているような状況であれば労災保険が認められる余地がありますが、全国的に感染症が流行っている場合は就業中に感染したかどうかはわからず労災の認定も難しいでしょう。
ただし医師や看護師の場合は職場が病院であり就業中に感染していてもおかしくはないので、医療関係者であれば認定が難しい感染症の労災も比較的ゆるやかに認められる余地があるのです。
労災が認められる病気はあるの?
労災保険とひとくちに言っても申請しても認められず、どんな病気であれば労災保険が適用されるのかいまいちわからない人も多いのではないでしょうか。
考え方の基本として仕事と病気(ケガ)に強いつながりがあれば認定される可能性があるといえますが、たとえば代表的なものに以下のような病気が労災のカバー範囲にあげられます。
精神障害
精神障害、身近な言い方をすると心の病気を発症した場合は労災保険が適用される余地があります。精神障害は当人だけにしかわからない症状なので仕事中が原因かどうかはわかりませんが、パワハラなどが日常的に横行している職場であれば労災保険が認められる可能性があるのです。
たとえば「早く辞めろ」や「給料泥棒」、またはわざと仕事をさせないなどが続いてうつ病や睡眠障害などを起こせば、仕事中に健康を脅かされたといえるでしょう。
先のとおり精神障害は当人にしかわからない症状でもあるので労災を認めてもらうにもパワハラの証拠とプライベートに精神を病む事情がないことを証明しなければいけないので、下準備はしっかりしないといけません。
熱中症
営業職などの方に多いですが、熱中症になった場合は労災保険が認められる可能性が高いでしょう。熱中症は主に水分・塩分不足や長時間酷暑の中で働かせることにより起こり、かつ業務命令で水分補給を禁止したり熱中症を危惧して安全配慮を怠れば仕事による災害として認められるのです。
たとえばカンカン照りの中を「契約が取れるまで休まず外回りをしてこい」というようなブラックな業務命令で倒れてしまったようなケースがあげられるでしょう。
人によっては自己の判断で長時間外回りを続ける人もいらっしゃいますが、もちろん業務命令がなくても仕事中に熱中症で倒れても労災として認定されますのでご安心ください。
喘息
技術職などの方であって、職場環境が特殊な場合ですと仕事中に起きた喘息も労災として認定される可能性があります。
喘息の原因はホコリやタバコなどを吸い込むことで気道が狭くなるのですが、木の伐採などが業務である人が切り粉を吸引して喘息が起きれば労災として認定されるのです。
そのほかにも多様な機械がある工場ですと、ホコリも舞いやすく体によくない物質を吸い込んでしまい喘息を起こすようなケースもあげられるでしょう。
もともと喘息を患っている人だと仕事とは関係がない(労災の対象外)と考えられるおそれもあるため注意しなければいけません。
労災以外にも傷病手当で補償は受けられる
労災保険があっても対象の病気でなければ補償されないおそれもありますが、もし労災として認められなくても傷病手当という制度を使って補償を申請することができます。
傷病手当は仕事以外で病気担った場合にお金が給付される制度で、労災申請して却下されたあとでも申請ができる救済措置ともいえるでしょう。
給付される金額は全額補償ではないものの、直近12ヶ月分の給料を30日で割った数字の3分の2が支給されるので補償は手厚い部類ともいえます。
気をつけなければいけないのは傷病手当は健康保険に加入している人が対象であるため、短時間労働者だと加入しておらず制度が利用できないおそれもあるため注意しなければいけません。
まとめ
感染症で労災保険の申請自体は可能ですが、全国的に感染が広がっているような状況であれば申請をしたとしても認められないおそれが高いでしょう。
しかし申請が却下されたとしても、却下自体に納得ができない場合は審査請求という制度を使って却下に対する不服を申し立てることもできるので完全に諦める必要はありません。
場合によっては問題が深みにはまることもあるので、当事務所のような幅広い問題に精通した弁護士にご相談されれば問題解決の糸口を見つける可能性も広まります。
事前のご連絡で土日祝日もご相談をお引き受けしていますので、ぜひお気軽にご相談ください。