2020.7.15 企業法務
労災とはどんな制度?会社を休んだ場合に受けられる補償を詳しく解説
労災保険は働いていれば誰しも一度は聞いたことがあるでしょうが、実際はどのような制度なのか、自分は労災保険の対象者なのかわからないのが現実です。
特にアルバイトやパート従業員だと「自分は無関係だろう」と思いがちですが、実はそうではありません。今回のコラムでは万が一働いている時間中にケガをしてしまっても慌てないように、労災保険がどのような制度なのか、どのようなものがもらえるのかをわかりやすく解説いたします。
労災保険とはどのような制度?
労災保険とは働いている時間中にケガをした場合に、公的なお金があなたに支払われる制度のことです。たとえば重たい荷物を運ぼうとして腰に強力な負荷がかかり、ぎっくり腰を発症してしまうケースがあげられます。
働いている間の身近なケガが補償されるのが労災保険の中身ですが、さらに掘り下げてると以下のような中身になっているのです。
加入・認定条件
多くの方が気になる労災保険への加入条件ですが、労働者側が特別な手続きをする必要はなく雇用が決まったら自動的に労災保険に加入されます。
労災保険は各事業者が任意に加入するものではなく強制的に加入を義務付けられており、たとえアルバイトやパートであっても誰かを雇う場合はかならず加入しなければいけません。
たとえば1日4時間の勤務を週3日で働いているパート勤務の女性であっても、雇用形態のいかんを問わず労災保険に加入されていることになるのです。
万が一仕事中にケガをしても必ず労災がおりるというわけではなく、通勤中に寄り道をして事故にあっても労災として認定されないので注意しなければいけません。
給付されるもの・金額
労災保険はひとくちにいってもいくつかの種類に分けられます。代表的なものにケガを治療するための費用や、ケガの度合いが大きく治療後も障害が残ってしまった場合は障害のレベルに応じた障害補償が支払われるのです。
具体的には療養補償は治療が完了するまでの間にかかった費用の全額が支払われるので、たとえば治療終了が宣告されたときに合計50,000円かかっていれば50,000円の給付がされるイメージです。
注意しなければいけないのはケガによっては完治しない場合もあり、治療の施しようがないと判断(症状固定といいます)されたときまでの治療費用しか支払われない点があげられるでしょう。
手続き方法
実際に仕事中にケガをしてしまった場合は申請書を記入して働いている会社に提出するだけで済みます。申請書自体は厚生労働省のホームページからダウンロードできるので、わざわざ窓口に出かけなくてもいいので手間にもならないのがポイントです。
企業の中には労災申請に協力的でないものもいて、申請をしても「忙しいからまたあとで渡して」と先延ばしにされて受け取ってもらえないような場合があります。
いわゆる労災隠しですが、たとえ企業が申請書を受け取らなくてもあなた(労働者)が労働基準監督署へ持ち込めば申請は可能ですので諦める必要はないのです。
労災保険では補償が不足している場合
労災保険は治療にかかった費用の補填が注視されがちで、働けなかった期間は給料がもらえず貧困しそうに思ってしまうでしょう。
しかし労災保険には治療費用だけでなく、いかのような補償を申請でき生活費が困窮しないように備えることもできるのです。
休業補償の申請
休業補償とはケガのために働けなかった期間が続いた人に対して支払われるお金のことです。休業補償は労災保険の中に含まれる補償のひとつで、こちらも特別な条件をクリアしないと申請できないというわけではなく誰でも申請しやすいという特徴があります。
ただし補償が開始するのはケガをして休みはじめてから4日目から補償がスタートするので、休んだ日すべてが補償されるというわけではないので注意しておかなければいけないでしょう。
傷病補償年金の申請
傷病補償年金とはケガをしてから時間が経っているにも関わらずケガが治っていない場合に支払われるお金です。
ケガとひとくちにいっても残念ながら必ず完治するというわけではなく、長時間の治療が必要になる場合もありますが、1年6ヶ月以上ケガが原因で休業している場合に支払われます。
休業補償とは違い傷病補償年金はケガのレベルによって給付されるお金が異なり、たとえば失明と視力の低下を引き起こすケガをしている場合は3級として認定され給付金が支払われるのです。
悪質な事業者であれば慰謝料の請求も検討を
労災の多くは業務中の偶発的な事故によってケガをすることが多いですが、中にはパワハラなどの精神攻撃によって労災申請に至る人もいらっしゃいますが、悪質な企業には慰謝料の請求も検討できます。
パワハラはそもそも働くうえでは必要のない、いわゆるいじめ行為であり、業務に関係ない個人への誹謗中傷は心を傷つける不法行為に該当し慰謝料を請求する余地があるのです。
たとえば普段から「いつも邪魔だね」や「給料泥棒は楽しい?」など言われ続けたケースはパワハラの代表的な言動であり、不法行為に基づく損害賠償請求ができるでしょう。
ただしパワハラがあったとしても証拠を集めなければ慰謝料を請求しても認められない場合があるので、普段からボイスレコーダーなどで証拠を集めるようにしておかなければなりません。
まとめ
労災は業務中に負ったケガを治す療養費や休業補償、そして障害補償など幅広い補償で労働者の損失を補填してくれる救済措置的な存在なのです。
しかし労災保険を申請したくても必ずしも企業が協力してくれるとは限りませんし、もともと企業と相性が悪ければケガを理由に解雇などを考える企業もあるため安心しきってはいけません。
もしあなたが労災を断られたり、納得できないような処分を会社からされた場合はひとりで悩まずにまずは当事務所へご相談ください。
当事務所では労働者からの相談を多数受けている実績があり、幅広い視点からあなたの問題が解決できるようサポートいたします。
ご連絡をいただければ土日もご相談をお引き受けしておりますので、ぜひお気軽にご来所ください。