2020.3.17 企業法務
法人破産はどう進んでいく?流れ別にみる手続きと必要な期間とは
大企業ですら買収されたり回収される時代で、中小企業であればいつ経営が傾いても不思議ではありません。経営が困難になり債務を返済できなかったり、従業員へ給料を支払えない状態が続けば法人破産を検討することになりますが、どのようなことをしなければいけないのでしょうか。
今回のコラムでは、もしもを考えて知っておきたい法人破産の流れと、完了するまでの期間について解説いたします。
法人破産の開始から終結までの流れ
債務が多すぎて破産する場合は裁判所の手続きにのっとって行われますが、裁判所手続きは社会に浸透していないので、破産手続きですらどのように行われるか理解されていないのが大半です。
深掘りすればするほどすべきことは多いのですが、大まかな流れでは以下の5ステップで進んでいくことになります。
弁護士への相談・依頼
まず法人破産においては弁護士への相談・依頼をすることが求められます。法人破産は一般人がおこなう自己破産と同様に自分一人で手続きすることも可能ですが、自己破産よりも手続き内容が多岐にわたるため、素人だけで対処するのは困難です。
自己破産であればインターネット上にも情報が掲載されていますが、法人破産に関しては情報が少なく、加えて裁判所からの資料提出や訂正要求などをすべてご自身でこなさなくてはなりません。
体力に自信があるという人でも、返済しきれなかった債権者への対応もあって罵詈雑言を浴びて精神的ダメージもあるのでコストカットのためと思っても個人での申し立てはしないほうが賢明です。
債権者へ受任通知の発送
弁護士へ法人破産を依頼したら、受任した弁護士が債権者へ受任通知を送ります。受任通知は簡単にいうと、「○○株式会社は破産します、つきましては担当者は私です」というお知らせをするものです。
弁護士が受任していない状態だと債権者から直接「借金を返せ」と督促をされるのですが、弁護士が法人の代理人となるので本人への督促が止まり喧騒から解放されます。
受任通知一枚で督促が止まるのか不審に思われがちですが、弁護士が受任した後は本人に対して督促してはいけないガイドラインが存在するため、良識ある債権者であれば本人への督促は行わないのです。
裁判所で破産手続きの開始
受任した弁護士が必要な書類を裁判所へ提出し、破産手続きをスタートさせます。提出する書類は破産の申し立てに必要な書類のほかにも、法人の預金通帳や自動車などの車検証の提出が求められ、すべて弁護士任せにはできません。
預金通帳や車検証などが必要な理由は、破産をしたい法人に本当に財産がなく破産をするにふさわしいかどうかをチェックするために求められるのです。財産をたくさん所有している法人もあるでしょうし、資料を集めるのが面倒と思われがちですが、きちんと手続きをしないと手続きが止まって長引く恐れもあるため、真摯に臨まなければいけません。
管財人の選出・面談
必要な書類を裁判所へ提出したら、裁判所が管財人と呼ばれる人物を選任します。管財人はいわば裁判所の代わりに法人が破産するに足りる状況にあるのかどうかを調べるために選出され、どうして破産をすることになったのか等詳しいことを面談を通じて調べていくのです。
面談といっても受任した弁護士が同席のうえおこなわれるので、警察の取調室みたいな厳密な環境のもとあれこれ問いただされるというわけではありません。
財産の売却・債権者への分配
管財人との打ち合わせが進めば、管財人が法人が所有する財産を売却していきます。たとえば法人名義で自動車を所有していればそれなりのお金に変えることができるので、売却金額を各債権者に平等に分配して返済に充てていくのです。
なお分配の前になぜ破産するに至ったかを債権者への説明会(債権者集会)を開かなければいけないので、お金を少しでも返せたら債権者への説明は省かれるということはありませんので注意しましょう。債権者集会と債権者への分配が終了し、裁判所から終結決定がくだって法人破産は完了します。
破産が終わるまでは最短半年
今回ご紹介した5ステップだけでもかなりの量がありましたが、すべてを完了させるまでは最短で半年、長くて1年程度は時間がかかります。
法人破産の手続きは提出すべき書類が多いので書類準備にも時間がとられやすいのですが、法人名義で所有している財産が多いと売却に時間がかかるためどうしても期間が伸びてしまうのです。たとえば自社ビルなど不動産を所有している場合はいくらになるのか算定し売却しますが、場合によっては買い手が現れずいつまでも換金できず長引くケースがあげられます。
破産手続きを早く終わらせたい気持ちがあるのは当然の心理ですが、破産したことで債権者へ迷惑をかけているので、少しでも債権者へお金が還元できるよう時間をかけるのは債務者の誠意であるといえるでしょう。
まとめ
法人破産が完了するまでは最短で半年程度から1年で完了し、その間に弁護士への以来、受任通知発送、破産手続きの開始、管財人との面談、債権者集会など複数のステップで進めていくことになります。
法人破産はやることの多さから弁護士であっても手間取るほど複雑なものですから、当事務所のように法人破産の経験が豊富な事務所にご相談されることをおすすめいたします。
当事務所は土日や夜間のご相談も可能ですので、お困りであればぜひ一度ご相談ください。