2019.8.22 離婚問題
離婚と別居についての解説
よく、離婚相談にいらしたお客様から、「別居してから〇年たたないと離婚できないって本当ですか」とか、「もう別居して〇年になるから離婚したい」などというお話を伺います。夫婦が同居していた年数と、別居開始後経過した年数、は、確かに離婚の可否には大きく影響します。
ですが、これがすべてではありませんし、そもそも、何をもって「別居」というのか、その出発点が間違っていると、完全に間違った知識のままで離婚協議を始めることになりかねません。以下では、「離婚」と「別居」の関係についてご説明します。
離婚に「別居」が必要な場合、不要な場合とその理由
民法では、「法定離婚事由」というものがあります。つまり、この事由さえあれば、相手が離婚したくないと言っていても、裁判に訴えれば強制的に離婚させることができる、という事由です。これの主なものは不貞ですね。
ただ、民法は、不貞などがなくても「婚姻を維持しがたい重大な事由」があれば、離婚できるとしています。問題は、「婚姻を維持しがたい重大な事由」とは何かです。たとえば、もう、婚姻関係が完全に形骸化している。夫も妻も別々に住んでおり、連絡も取っておらず、円満な関係を改善したいとも思っていない。このように、婚姻関係がすでに破綻していると認められる場合には、裁判所は、離婚判決を言い渡しやすいのです。
それで、「婚姻が完全に破綻している」と判断するための重要な要素が、「別居」なのです。
なぜ「別居」が大事かというと、同居は、夫婦としての基本的な在り方であり、義務だからです。にもかかわらず、長年別居状態が続いていて、解消される見込みがないのならば、婚姻関係が破綻している、という判断に傾きやすいのです。
つまり、不貞などの「法定離婚事由」があれば、それだけで離婚できます。別居期間は関係ありません。一方、不貞などがない場合には、「婚姻関係がもはや維持できない」と裁判所に認めさせるための要素として、「別居期間」が必要になってくるわけです。
「別居」とはどのような状態か
しばしばお客様がおっしゃるのが、ウチはもう何年も家庭内別居状態なんです。これは「別居期間」となりますか?という質問です。非常に多くの場合、裁判所は、家庭内別居を別居期間とは認めません。ご本人たちがどう思っていても、一つ屋根の下に住んでいれば、客観的な目からみればそれは同居です。
そして現に、ご本人が「家庭内別居」と思っていても、相手はそうは思っていない、法廷では仲の良い夫婦だったと主張する、ということはしばしばあります。今の状態は家庭内別居で、夫または妻は、離婚には同意しているはず、と思っていらっしゃる方は、要注意です。
また、「親の介護のための別居」は離婚における、いわゆる別居と認められるかも問題になります。これは、一概に言えることではありません。別居中の夫婦の関係、帰宅の頻度や、それまでの夫婦関係などを総合的に判断しなくてはなりません。
「単身赴任」か別居か、というのも問題になります。これは、たとえば年末年始や夏休み、子供の誕生日などをどのように過ごしていたか、その間の家族のやり取り、帰宅回数、帰宅時の状態などを総合的に考慮して判断されることになります。
余談になりますが、妻には単身赴任だと言って出て行ったものの、実は別の女性と暮らしている、というケースもままあります。
離婚には、何年間の別居期間が必要か?
まず、「有責配偶者」、つまり、あなたが浮気した側であれば、あなたから離婚請求を立てて認められるためには、相当長い別居期間が必要と覚悟してください。最低でも6年以上はあった方がいいです。加えて、幼いお子さんがいる場合には、さらに難しいです。
双方に特段浮気はない。しかし性格はあわず、もう一緒には住めない、だから別居する。しかし、相手は離婚に同意していない。この場合、別居何年で、離婚は認められるでしょうか。このようなご質問も多くあります。
ですが、離婚は、別居期間だけで認められるものではありません。上述のとおり、別居期間は「婚姻関係を維持できない」と認められるための、櫃の要素にすぎません。したがって、ほかの要素、たとえば、性格がどのように合わないのか、とか、どのような大げんかがあったのか、とか、別居期間中に関係改善を求めた形跡があるかとか、そういう事情も併せて考えなければならず、一概に「別居3年で離婚できる」とは、言えません。
ただ、別居期間が長くなればなるほど、離婚が認められやすくなることは事実です。たとえば、殴り合いの大げんかをして別居してから4年。その間、一切会っていない。メールや手紙のやり取りもなく、双方いずれも関係改善を求めていない、といった場合であれば、たとえ相手が法廷で離婚を拒否しても、判決では、離婚が認められる可能性はあります。一方、上記のケースで、別居が1年半だったとすると、判決で離婚が認められない方向に傾きます。
まとめ
このように、別居期間は、離婚可否の判断において重要な要素ではありますが、決してこれだけがすべてではありません。ほかにもいろいろな要素があり、全ての要素を、裁判所に、説得的に示さなくてはなりません。結婚、つまり、婚姻契約は、簡単に破棄できるものではないのです。
ですが、上手に組み立てれば、より良い人生の再スタートを切ることも十分可能です。そして、最初の一歩を踏み出すことが肝心です。何もアクションを起こさなければ、婚姻関係は変わりません。最初の一歩を踏み出す勇気を、固められるかどうかが、大事です。