2019.7.17 借金問題
内緒で破産できるのか?
破産したいけれども、「内緒で」できるだろうか、というご相談はたくさんあります。まず申し上げておきたいことは、破産は、法律上認められた制度であり、我が国の皆さんは誰でも、この制度を利用する権利がある、ということです。破産は、いわば「借金をチャラにする」制度ですから、それは、債権者さんには迷惑を掛けてしまいます。
ですが、その「迷惑」を考慮してでも、この人を立ち直らせ、再出発のチャンスを与えるべきだ、というのが破産法の趣旨でもあります。「破産」という言葉にはどうしても悪いイメージ、暗いイメージが付きまといます。だから皆さん、周囲の目を気にされます。「職場に知られるのではないか」「家族にバレるのではないか」と心配されます。しかし、人間は誰でも間違いを犯すものです。
もし、どうしようもなくなってしまったら、思い悩んで苦しみすぎることなく、正々堂々と、債権者に平等にごめんなさいをし、そして、あなたの人生を、新しくやり直していただきたい。きちんと手続きさえとれば、ほとんどの破産のお客さんは、落ち着いた生活を取り戻され、新しいスタートを切っていらっしゃいます。おひとりで借金地獄で苦しむことなく、ぜひ、立ち直っていただきたいと、わたくしどもは、願っています。
破産は親に知られるか?
破産を親に知られたくない。親御さんに心配を掛けたくない。という方は多くいます。まず、親御さんと離れて住んでいらっしゃる場合はどうか。これは、親御さんが連帯保証人になっている債務がなく、かつ、親御さんにお金を借りたりしていなければ、親御さんに破産が知られる可能性は低いでしょう。
親御さんが連帯保証人になっていると、親御さんは、破産者の借金を肩代わりして払わなくてはなりません。そのため、破産の際には弁護士からも連絡が行きますし、債権者からも連絡が行くことになります。また、親御さんに金を借りている場合には、親御さんが債権者になりますので、弁護士は親御さんに通知を送らなくてはなりません。このような場合には、どうしても、親御さんに知られることになります。
言いにくいことでしょうが思い切って相談されてください。思い切って相談したら、思いがけず、親から暖かい言葉をかけてもらった、意外にも、応援するから、と言ってもらえた、というひとは多いものです。
破産は配偶者に知られるか?
経験則上「奥さんが、旦那さんに知られずに破産できた」という事例は、何度かあります。また、「旦那さんが、奥さんに知られずに破産できた」事例も、無いわけでもないです。ただ、後者の方が、難しいだろうと感じています。それはなぜかというと、破産の場合には、同居家族の収入状況を裁判所に報告しなければならないからです。
多くの家庭では、奥さんは旦那さんの収入を把握しており、旦那さんの通帳や給与明細などもすぐ準備できます。旦那さんにわざわざ事情を話して理解してもらわなくても、それらの資料が手に入ることが多いのです。一方、旦那さんが、奥さんの収入状況を把握しているかというと、必ずしもそうではありません。把握していない場合、どうしても、奥さんに事情を説明して、収入資料や通帳の写しをもらわなくてはなりません。なので、バレてしまう可能性が高いのです。
つまり、破産したからと言って、裁判所から奥さんや旦那さんに、通知が行くわけではありません。しかし破産手続きを行う中で、どうしても配偶者の収入資料は必要となります。その収入資料を手に入れるために、配偶者に説明をしなければならないことが多い、ということになります。先ほども書きました通り、配偶者に破産のことを言わなくても、破産手続きが滞りなく終了することもあります。
ですが、弁護士としては、あまりお勧めしません。やはり夫婦は運命共同体です。破産したのに、私に黙っていた…と、ひょんなことで、配偶者が気付けば、著しい不信感をもつことになります。きちんと夫婦で話し合われることを、お勧めします。
破産は職場に知られるか?
あなたが破産申し立ての手続きをしたとしても、裁判所から自動的に、職場に通知が行くようなことはありません。なので、あなたが職場から借金をしていない限り、職場があなたの破産について知ることは、原則として、ありません。
ただ、例えばあなたが職場の同僚から金を借りている、などの事情があれば、その同僚のところには、通知が行きます。その同僚が職場で話してしまうということも、ないわけではありません。また、破産する場合には、現在の見込み退職金額を裁判所に提出する必要があります。その見込み退職金額については、職場に聞かなければわからないこともあります。
そういう意味で、「いま、私が退職したら、退職金はいくらになりますか?」と職場に聞かなくてはならない場合があります。その質問を受けた職場が、なぜこんなことを聞くのだろうと不思議に思う、ということはありますね。
恐れずに、怖がらずに、相談しましょう
破産について迷っている方に、最後に申し上げたいことがあります。それは、今のままでいても、絶対に状況は良くならない。ということです。どこかで行動を起こさなければ、今の状況は変わらないのです。
借金でにっちもさっちもいかなくなってしまっている・・とお感じならば、いまは、あの人に知られたくないとかこの人に知られたくないとか、そういうことで悩む前に、もう全部さらけ出して、法的手段に助けを求めることをお勧めします。
実際に一歩を踏み出すと、おそらく安心されることでしょう。多くの方が破産され、その後、安定した人生を送っていらっしゃいます。破産は人生をやり直すチャンスです。恐れずに相談されることをお勧めします。