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コラム

離婚問題

親の再婚を子がどう見るか

親の再婚を子がどう見るか

俳優の渡辺謙さんが、再再婚されました。良く知られることですが、謙さんには、杏さんというお嬢さんが、女優として活躍しておられますね。

親の離婚を子がどう受け止めるか、子がどういう影響を受けるか、というのは大問題ですが、親の「再婚」を子がどう受け止めるか、というのも、まったくもって様々です。
まあ、親の再婚に、子は、とやかく言える立場ではありません。子が賛成だろうが反対だろうが、親は再婚できます。
子の、親の再婚に対する好悪が、問題となってくるのは、遺産分割の時点です。つまり、子の実親が亡くなり、相続人として、子と、子の親の再婚相手(配偶者)が、直接向き合わなければならなくなった時です。

子と、子の親の再婚相手とが親しくない場合、まずもって、亡くなった人の再婚相手(配偶者)が、子(前妻/前夫の子ですね)に、その死を知らせないことがあります。知らせたくても知らせようがない、連絡先さえ知らない、ということもあります。
そうすると子が知らないうちに、親の葬儀が終わってしまっていることがある。法律上、別に、ほかの相続人に被相続人の死を知らせる義務はありませんからね、死や葬儀について、知らせなくても法的には問題がない。
ただ、全相続人の印鑑がなければ、相続手続はできない。なので、再婚相手(後妻/後夫)は、遅かれ早かれ、前妻/前夫の子に、相続の発生(つまり親の死)を知らせなければなりません。
このとき、非常に淡々と、他人行儀のままに、相続手続が粛々と進むときもあります。亡くなった方(被相続人)に遺言がなく、法定相続分通りに話が進むときなどは、特にそうです。

一方、遺言があるとき、特に、遺言によって、後妻/後夫に多くの遺産が遺されるときは、揉めることがあります。

一番こじれるのは、子が親の再婚を受け入れられない/苦々しく思っているときです。この時は、被相続人の遺骨の帰属を含めて、非常に激しく争われます。

私は一度、このような子の立場だった、50代の男性の遺産分割をやったことがあります。彼の父親(被相続人)は、彼の母親とまだ婚姻関係にあったときから、二番目の妻になる女性と不貞関係にあり、彼は、自分の母親が夫(自分の父親)の不貞に怒り、苦しみ、離婚した経緯を目の当たりにしていました。彼は、母親から「あの女(後妻)だけは絶対に許してはいけない」と言われて育ったそうです。
両親は彼が中学生のころに離婚し、その後、母親は再婚せずに亡くなり、父親はすぐに不貞相手と再婚。彼は父親と再婚相手を許せず、全く連絡をとらないまま、数十年が経過しました。
そして、突然、家裁から遺産分割調停の期日呼び出し状が届いたのです。それによれば、父は半年前に亡くなり、すでに葬儀も終わっている。遺産分割で話し合いたいため、後妻が調停を起こしたので、裁判所に来てほしい。とのことでした。
彼は怒り狂いました。「なぜ、自分に親の入院や死、葬儀を知らせなかったのか」「父をちゃんと介護していなかったに違いない」「後妻は父がぼけた後、財産を使い込んでいたに違いない」。。。などなどです。
しかし、調べてみてもそのような証跡はありません。それでも彼は、後妻には絶対兄さんは渡さないと頑張ります。調停委員からも裁判からもいろいろ説得され、彼はとうとう納得したのですが、最後に、後妻が相続人であることを認める代わりに、父親の遺骨は自分に渡せ、と言いました。理由を聞くと、「母親の遺骨と父親の遺骨を、並べて仏壇に祀りたい。そして最終的には父母を同じ墓に入れたい」と言いました。

これを聞いて、私は、50歳過ぎた、立派な大人の男性が、子どものころ、「両親の別離」という事態から受けた傷をいまだに抱えておられる、両親を再び並べることで、その傷を癒そうとしているのだな、とつくづく思いました。

ただ、後妻からみれば、自分が、もう40年も連れ添ってきたのだ、前の奥さんより婚姻期間は長いし、子どもだって全然父親の面倒を見てこなかったではないか、それに比べて自分は大変な苦労をして夫を介護し、看取ったのだ。当然、遺骨はこちらで祀る。一部たりとも、絶対に渡さない。ということになります。

この件は、結局、後妻の意見が通りました。まあ、法律的に言うとそうなります。ならざるを得ません。彼は、しぶしぶ遺産分割に同意して調停が成立したのですが、調停成立後、家裁のロビーで大泣きに泣きました。悔しいですか、と聞くと、いやそうではない。ただ、子どものころから、両親の離婚を止められなかったことで、ずっと自分を責めてきた。最後だけは二人を並べたかった。それさえかなわなかったことが、悲しくつらい。と仰いました。

このように、子が、親の再婚をどう見るか、というのは、親の再婚時に表出するというより、親の死亡時に表出し、大きな紛争になることがままあります。

渡辺さんはまだまだお元気でいらっしゃるので、遺産分割問題は先の話でしょう。しかし、再婚を考える皆さん、再婚された皆さんには、このような問題が発生しえることに十分ご留意いただき、きちんと、お子さんとコミュニケーションを図るなど、何らかの対策を取っておかれることをお勧めします。

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