2023.3.18 借金問題
自己破産と免責
自己破産をする方(破産者)は、当然、免責の許可を取ることを望んでいます。免責許可が出ると、破産者は、債務の支払い責任を免れることができるからです。
破産の申し立てをし、開始決定が出ますと、まあ、まともにきちんと対応すれば、たいてい、免責は許可されます
かつて、弁護士で、「今までの免責獲得実績100%!」という広告をだして集客をし、周囲の弁護士から大いに失笑を買ったひとがいました。それくらい、免責というのは、ちゃんと弁護士をつけ、財産隠しや親族だけを優先するような偏波弁済などをせず、誠実に対応していなければ、普通、認められるものです。私も長いことこの職業をしていますが、免責が認められなかったという経験は、一度もありません。
ただ、「これは、免責、危ういかも」と思ったことは何度かあります。
一つは、マッサージ屋さんの破産のときです。このマッサージ屋さん、破産の相談に来る直前に12回の回数券をすごくたくさん売りさばいてたんです。で、その直後、破産して店を閉めちゃったわけで、当然、12回分の回数券を買わされたけれども、全然使いきれていない、っていうおばさんたちがたくさんいました。債権者集会に、これらのおばちゃんがどっと押し寄せてきたのです。「回数券を売った時から、店がもうあと1か月も持たないってわかってたんじゃないか、たくさんの回数券を売りつけて、店を閉めるつもりだったんじゃないか、それで私たちを騙して、回数券を買わせたんじゃないか!」というおばちゃんたちの怒りの声が法廷に渦巻きました。
裁判所は、免責の可否判断するとき、債権者から異議がでているか、でていないか、というのは、とても気にします。なので、破産社代理人弁護士として出廷し、この状況を見た私は、これは免責、やばいかもしれない、と心配になりました。
裁判所も、「たしかに、回数券を売った時の経営状況はかなり深刻だった。店主は、回数券を売っても、購入者が使い切るまで店が持たないと知っていながら売ったのではないか」とは疑っていました。しかし、売り始めた時期は、破産相談に来る2か月前であり、マッサージ屋さんは「起死回生の最後の策として売っただけです」と訴えました。最終的にはこのマッサージ屋さんの主張がとおって、まあ、免責は認められました。
もう一つのケースは、ある男性のケースです。この男性は、少し浪費癖があってカードローンに追われていたところ、借りていたアパートの大家さんと行き違いがあり、仲が険悪になりました。憤慨したこの男性は、折からのローン支払いが苦しかったこともあり、家賃の支払いを止めたのです。
しかし、それでも生活は楽にならず、結果、破産に至りました。もちろん、未払い家賃も免責の対象になります。破産の知らせを聞いた大家さんは大変怒り、その債権者集会に乗り込んできて、法廷で、さんざん、納得いかないと大声をだし、免責許可を出さないように求める意見書まで出してきました。
このときも、そこそこの浪費があったことに加えて債権者から強い異議がでたことから、私は、すわ、免責不許可かと大変心配しました。しかし、このケースでは管財人の先生が非常に心の温かい方で、一生懸命、この男性の味方をしてくれました。おかげで、無事に免責が出ました。
ちょっと浪費があったりしても、債権者から異議さえでなければ、免責はでます。ただ、債権者から異議がでると、要注意です。そういう意味では、銀行や消費者金融は、まず、債権者異議を出してくることはありません。なので、個人から借りていない方は、ちゃんとした弁護士がちゃんとやれば、免責は多分出ます。逆に個人から借りている方は、貸主から異議が出ることがあるので要注意です。
ただ、上記の例のように、異議が出たとしても、頑張れば免責は許可してもらえます。なので、あきらめてはいけません。誠実に反省の気持ちを伝え、また、更生の意欲を伝えてください。そうすれば、免責は、出ます。よほどのことがない限り。